県名と同じ名を持つ牛肉の千葉

「牛肉の千葉」というと、ほとんどの人が県名の千葉を真っ先に連想し、首都圏にしては観光牧場もあるだけに、県内全域に美味しい焼肉屋さんが多いのかもしれないなどと想像をめぐらします。実際、県の北西部は都心へのアクセスも抜群で、人気の焼肉店も多いエリアですが、「牛肉の千葉」は、たまたま県名と漢字が同じの牛肉の部位を指す別名でもあります。肉の部位に詳しい人であれば「千」の漢字でピンと来るかと思われますが、千枚こと、牛の第三胃である「センマイ」のことで、千葉は、韓国語でのセンマイを指す表記で「チョニョブ」という発音になります。千葉は、韓国語ではそのまま千枚という意味ということで、韓国の人が千葉県の文字を見た場合「千枚県」という印象になると考えられますが、牛の部位としてのセンマイは、胃ということでホルモンのカテゴリに入ります。見た目は、イタリアンで人気のトリッパのトマト煮でも有名な第二胃であるハチノスよりも、さらに食材らしくない外見で、ややグロテスクな印象もあります。ハチノスよりグレーがかっており、シワの寄り具合から無造作に置いた布のようにも見え、そのため別名「ぞうきん」という、あんまりな呼び方もされています。しかもグレーの色合いから、使い古しのぞうきんとまで評され、食材に付けられる異名としては、最悪の部類とも言えます。
ホルモンということもあり、見た目の雰囲気からも、相当のツウでなければ到底賞味できないほどクセのある味や食感のような印象を持たれても致し方ないセンマイですが、その想像に反して、ホルモンの部位としては、慣れていない人にも賞味しやすい味を持つと言われ、人によっては、一度食べるとその味と食感が忘れられなくなり、再び味わいたくなるという、文字通りクセになる部位と言われます。下処理が徹底されたセンマイはホルモン特有の匂いも少なく、茹でて食べやすいサイズに切りそろえられたものは「センマイ刺し」と呼ばれ、これを目当てにホルモンの専門店に来店する人がいるほど、ファンの多いメニューです。味はもとより、コリコリとした食感が最もクセになるポイントと言われ、一度魅了されると、ぞうきん的な見た目が気にならなくなるどころか、愛ある眼差しで見つめることになると言います。漢字では同じ字を持つ、千葉県内のホルモン人気が高い焼肉店でも千枚ことセンマイ刺しは大人気で、漢字で書くと県名と同じ表記になるということは、おそらくあまり知られないまま、センマイに舌鼓を打つ県民が多数存在すると考察されます。
牛には、ホルモン以外にもツウ好みの部位があり「そともも」もそういった部位の一つです。そとももがあれば、当然「うちもも」もあり、どちらも牛の後ろ足のももで、そとももは、関西圏ではそとひらとも呼ばれています。そとももはさらに、しきんぼう、なかにく、はばきといった名称の部位に分けられ、牛の体の中で最も運動する部位が集まっているだけに、お世辞にも柔らかい肉とは言えず、きめも粗く硬い肉質となっています。とは言え、独特の硬さを魅力ある弾力と捉え、その歯ごたえを愛するツウも存在し、薄めにスライスして煮込み料理にするなど、部位の特徴を生かした調理方法で賞味されています。スネ肉がカレーやシチューで愛されているように、よく煮込むことで味と食感に魅力が増し、料理の味も引き立てる部位と言われます。こだわる人は、同じそとももでも、しきんぼう、なかにく、はばきの部位ごとに合う調理方法を選び、しきんぼうは硬さがありながらも、薄くスライスされてツウ好みのしゃぶしゃぶ用に、はばきは中央にあるスジをひいてから煮込みに、なかにくも、スライスされたり角切りにして、同じく煮込み料理や焼肉にも使われます。そとももはツウに注目されている部位だけに、カッティングによっても良し悪しが決まるとも言われ、専門の業者も牛肉のそとももを卸売に出すには、それなりの技能が必要ということで、腕の見せ所にもなっています。賞味する側としては、何となくちょうどいいサイズや厚み、薄さでカットされているといった印象のみ抱きますが、プロの料理人や真のグルメは、そういった点も含めて評価し、味わう側は、素材本来の味と共に、食卓にのぼるまでの技能すべてを理解して、深いレベルで美味を堪能していると考えられます。この記事もおすすめです『通好み部位のガツとは何?豚ホルモン18種網羅的ランキング
そとひらは、煮込み向きの部位ではありますが、近年、ステーキでも美味しく味わえるような焼き方の技術が磨かれてきていると言います。また、近年の熟成肉ブームで、これまで硬すぎる食感で敬遠されていた部位が、適度な弾力と新たな味わいを備えて世に送り出され、新たな好評を得るようにもなってきています。肉を食べることで得られる健康効果が一昔前よりも科学的に解明されてきて、部位によって違う効能などもアピールされるようになり、美味しく味わって健康効果も得られる食材として、これまで以上に注目されるようになっています。